2022/03/14 06:32

子供の頃、可愛がってくれた叔母がいた。

建築業を営む旦那さんと、

大恋愛の末に結婚したらしい。

旦那さんはヤンチャな感じで、

ぱっと見89383のようだった。

叔母はぽっちゃりしていたが、

いつもばっちりメイクをして、

とてもオシャレだった。


叔母の家に遊びにいくと、

行きつけの喫茶店に連れて行ってくれた。

毎朝モーニングを食べに行っているらしい。

子供心に、それがすごくカッコよく思えた。


叔母から譲ってもらったヒールは、

小学低学年の私にとって、

まるでシンデレラの靴のように、

煌めいていた。

実際、青いスパンコールを敷き詰められた

そのヒールは、お姫様が履くような、

関西弁で言うと

「どこに履いて行くねん!」

と言う派手なものだった。

履いた記憶は一度しかなく、

地域の盆踊りに、ハワイのムームーを着て、

そのヒールを履いて行った。

その出立ちと派手な顔も手伝って、

「外国人の女の子が盆踊りを踊ってる‼︎」

と、噂になってしまった。


その後すぐに、叔父と叔母と一緒に

ミナミで遊んだ。

覚えているのは、連れて行かれた店に

バニーガールがいたこと。

おそらく、小学生を連れて行くような

店ではない。

肉が苦手だった私のために、

伊勢海老のクリームソース煮を

注文してくれた。

ほっぺたが落ちるくらい美味しかった。


そんな叔母だが、ある頃から

商売が立ち行かなくなったようで、

化粧もせず地味な格好をするようになった。

お正月に行っても、

「お金がないからお年玉あげられなくてごめんね」

と、申し訳なさそうにしていた。


そんな叔母を見るのが嫌で、

その日以来会うことはなかった。

その後、本当に困ったようで、

とある詐欺を働いてしまい、

逃亡生活を送っていたらしい。


しばらくして、叔母の死を知った。

正確には、叔父と叔母の死を知った。

煉炭自殺だった。


叔父と叔母は出会った頃、連日

ダンスホールで夜通し踊っていたらしい。

半ば駆け落ち状態で結婚して、

栄枯盛衰の果てに、散っていった。

悲しいことではあるが、

何となく、これでよかったと思う。

叔母も納得して逝った気がする。

じゃないと、やりきれないじゃないか。